心理学

睡眠がもたらす効果

人は、なぜ眠るのか?

身体と脳を休ませる

睡眠の最大の役割は、起きている間に使った身体と脳を休ませることです。

人間の身体には、眠っている間に熱を逃がして脳を冷やす「熱放射」という仕組みが備わっています。昼間の活動時には高く保たれている脳の温度を、睡眠中に冷やすことで疲れを回復させているんですね。

肉体的な疲労は横になって休めば、ある程度解消できますが、脳は目を覚ましている間は休息できません。

スマホを長時間使っていると熱を持ちますが、その結果、フリーズしたり、動作が遅くなったりしたという経験がみなさんにもあるのではないでしょうか?

こういった場合、元通り使用できるまでに一定時間スマホの使用を止めなければなりませんよね。同じように、脳も長時間の活動で疲労し、一定期間休ませなければ、十分なパフォーマンスを発揮できなくなります。

成長ホルモンの分泌

睡眠には、脳と身体の休息の他にもさまざまな役割があります。

まず、眠っている間に脳から分泌される「成長ホルモン」の作用があります。この成長ホルモンは、骨や筋肉の成長を促す働きがあり、子どもの成長には欠かせないホルモンです。

成長ホルモンには、日々ストレスを受けて傷ついた細胞を修復したり、そのために利用するタンパク質の合成をコントロールする働きもあります。

では、どの時間帯に成長ホルモンが出るのでしょうか?

「午後10時から深夜2時は、お肌のゴールデンタイム!」

「身長を伸ばすためには早く寝たほうがいい!」

といった情報をみなさんも耳にしたことがあるかと思います。

しかし、実はこれらは間違った情報です。

眠りにはリズムがあり、私たちは、寝つきにまず深い眠りである「ノンレム睡眠」へ入り、その約90分後にレム睡眠が出現します。みなさんの耳にも馴染みがある言葉であると思いますが、レム睡眠は、私たちが夢を見る睡眠として有名ですね。

私たちは、この「ノンレム睡眠」と「レム睡眠」を繰り返し、朝方に向けて徐々に眠りが浅くなることで目覚めます。

成長ホルモンが分泌されるのは、主として深いノンレム睡眠の最中です。そのため、入眠から約3時間の間に集中して分泌されます。眠りはじめの時間が変われば、分泌時間も変わルため、午後10時〜深夜2時までと決められているわけはありません。

つまり、世間でいう「ゴールデンタイム」が終わった深夜2時以降に寝ても、入眠からぐっすり眠ることができていれば、成長ホルモンはしっかり分泌されます。

ただ、就寝時間は関係ないとはいえ、成長ホルモンの分泌促進には、深い眠りを促すために、ある程度まとまった睡眠時間を確保するようには努めましょう。

免疫力を高める

そして、細菌やウィルスなどから身体を守る「免疫力」を高く保つことも大切な役割の一つです。

外敵に抵抗する「抗体」を作るβ細胞は、夜間眠っている間に最も活発になりますが、睡眠不足があると風邪やインフルエンザなどの感染症にかかりやすくなりますが、その原因の一つがβ細胞をはじめとする免疫細胞の働きが低下するためだと考えられています。

記憶を定着させる

さらに睡眠には、「眠っている間に記憶を脳に刻み込む」役割があります。

ある実験では、夜に暗記をさせて8時間眠った後の翌朝にテストをするパターンと、朝勉強して当日、8時間後にテストするパターンでは、睡眠を挟んだ方が、よく覚えているということが報告されています。

そうはいってもテストや試験前に詰め込んで勉強してしまう心理もわかります。しかし、「大事なことをしっかり覚えようとするのであれば、きっちり睡眠をとる必要がある」ということを知ると、寝る前の過ごし方と翌日の過ごし方を工夫しようという意識が生まれるように思います。

まとめ

最後に、ここまで紹介した睡眠の効果についてまとめておきます。

・脳と身体を休ませる
・成長ホルモンの分泌
・免疫力を高める
・記憶を定着させる

ぐっすり眠ることは、ストレス解消にも効果があり、質の高い眠りは、心と身体の健康に欠かせない習慣といえます。みなさんも十分な睡眠が取れているか日々の生活を振り返ってみてください。

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