心理学

職場でのストレスへの対処法 セルフケアの基礎的な知識

セルフケアとは?

「セルフケア」とは、ストレスを感じたとき、客観的にそのストレスの存在に気づき、それに対処する知識と方法を身につけて実践することを言います。

セルフケアを行うには、ストレスについての基礎知識を身につけると同時に、日常生活での工夫を心がけることがとても大切です。

この記事では、ストレスと上手に関わりながら働くために必要なセルフケアに関する基礎的な知識その実践方法について紹介したいと思います。

ストレスとは

まず、皆さんは「ストレス」と聞いてどのようなものをイメージしますか?

ストレスとは、外部から刺激を受けた際に生じる緊張状態の総称であり、何も悪いものばかりでなく、結婚・出産・昇進などの喜ばしい出来事も「日常が変化する刺激的なこと」としてストレスに該当します。

ストレスに関する詳しいことは下の記事を参照してください。

【ストレス記事】

仕事におけるストレスは、個人の耐性(遺伝的要因・性格傾向など)職場の環境(業務内容・業務量・人間関係など)が絡み合って生じるため、人によって感じ方は様々です。

例えば、【わからないことを周囲に聞くことを当たり前と感じている人】と【わからないことを聞くことに対して申し訳なさを感じてしまう人】ではストレスのかかり方が違いますし、業務に対するモチベーションなどによってもストレスのかかり方は違ってきます。

このように、人によってストレス耐性は異なるため、自分がどのような状況下でどのようなことをストレスと感じやすいのか知ることはとても重要なポイントになります。

さて、ストレスについて簡単に触れましたが、ストレスを感じていることに自分自身で気づくためにはどうしたらよいのかについて紹介したいと思います。

心と身体から出される「お疲れサイン」に気づく

私たちの身体は、心と身体がボロボロになる前に「疲労の警報」を出しています。

この心と身体から出る「疲労の警報」=「お疲れサイン」に気づかないまま仕事を続けたことで取り返しのつかない状態になってしまったということも‥。

そして、休職される方の多くは「まさか自分が心の病になるなんて思いもしなかった‥」と話されます。

うつ病の代表的な症状として、不眠症状食欲不振、活動意欲低下などが挙げられますが、これらの症状が生じてしまっている状態はすでに赤信号です。

そのため、私たちは、上記のような症状が生じる前段階でストレスに対処する必要があります。

そこで今回は、心と身体から出される「お疲れサイン」を3段階に分け、自分で気づくサイン周囲が気づくサインの2つの観点から紹介したいと思います。

3段階の「お疲れサイン」

【第一段階】お疲れサインの初期症状

第一段階の疲れのサインは、「判断力、決断力、思考力の低下」です。

「あれ‥?今まで時間内に終わっていた業務が終わらなくなったな‥」

「今までこんなミスしなかったのに‥」

実は、こういった些細なところからお疲れサインは出ています。この第一段階のサインは最も見落とされがちです。

些細な疲れから日中にボーッとする時間が増えたり、判断力が低下すると、それだけ業務が捗らなくなります。

そのため、みなさんには、小さな疲れが連鎖的に業務パフォーマンスを低下させることをまずは知っていただきたいです。

自分で感じるサイン
  • 考えがまとまらない
  • 簡単なミスが増える
  • 依頼された仕事が遅れ気味になる
  • 疲れが取れにくいと感じる など
周囲が見えるサイン
  • 頼んだ仕事が遅れがちになる
  • 休憩などで席でぐったりしている
  • 今までなかったミスが出てきた
  • ボーッとしている 
  • イライラしている など

【第二段階】疲れが溜まり始める段階

第二段階は、「人と会うのが疲れる」ようになり始める「黄色信号」の状態です。

具体的には、会議や打ち合わせがあると気が重くなったり、人前でプレゼンするのが苦痛に感じるといったものです。

また、プライベートでも飲み会や友人からの誘いに気分が乗らなくなるなどします。

自分で感じるサイン
  • 打ち合わせなどが億劫になる
  • 会議に出ると疲れる
  • 休日に家から出たくない
  • 人と会うのに腰が重くなる など
周囲が見えるサイン
  • 電話に出るのを避ける
  • あまり人と話したがらない
  • 表情が乏しい
  • 会議などでの発言が減った など

【第三段階】生理的な不調が生じ始める段階

第三段階は、「生理的な不調(疲労)」が生じており「赤信号」な状態です。

冒頭にて、うつ病の代表的な症状として、不眠症状や食欲不振、活動意欲低下などが挙げましたが、それらに該当する症状が出現している段階であり、早急な対応が必要になります(後述)。

自分で感じるサイン
  • 眠れない / 朝起きれない
  • 何をするのも億劫に感じる
  • 1日中憂うつな気分になる
  • 食欲がなくなる
  • 休日も仕事のことが頭から離れない など
周囲が見えるサイン
  • 遅刻や早退、休みが増える
  • 表情に活気がなく、動作にも元気がない
  • ミスやインシデントが目立つ
  • 残業時間や休日出勤が急に増える
  • 明るく振舞って空回りしている など

セルフケアで心がけたいこと

まずは、「疲れたな‥」と感じたときは、無理せず、早めに就寝してたっぷり睡眠をとるようにしてください。

睡眠時間は人によって様々ですが、目覚ましなしで起きれるほどの睡眠時間が欲しいところです。

1〜2の段階の症状が出ていると感じたときは、睡眠時間をたっぷり確保し、健康的な食事を取り、休みの日に趣味や好きなことをしてリフレッシュするなどを意識的に心がけましょう。

また、可能であれば、悩みやストレスが生じた場合に社内の上司・同僚に相談したり、社外の家族や友人などに相談したりするなど、1人で溜め込まないことがとても重要になります。

相談相手がいなかったり、相談することが難しい内容である場合には、言語化するだけでも気持ちの整理になるので、ペットやぬいぐるみに愚痴を聞いてもらうことも効果的です。騙されたと思ってぜひ一度試してみてください。

食事や睡眠に関して詳しく知りたいという方は下の記事を参照ください。

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第三段階(赤信号)に該当した場合の対応

もし、第三段階の症状に該当した場合には、疲れすぎて休養できていない状態にあるということをまずは自覚していただきたいです。

そして、いつ休職してもおかしくない状態でもあるため、なるべく早めに社内の産業医へご相談いただく、あるいは、近隣の心療内科(クリニック)精神科を受診していただくようお願いします。

この段階まで来てしまうと専門的な知識や治療なしでの回復がむずかしいため、1人でなんとかしようと思わず、医療機関等の助けを借りることを強くお勧めします。

ただし、医療機関にも合う合わないがあるため、ご自身が「この先生なら信頼できそうだ」「ここなら通いやすい」などと自分に合う医療機関を選ぶようにしてください。

薬を飲むことに抵抗がある場合などは、その旨を医師にしっかり伝えて寄り添ってくれる先生を探しましょう。

最後に

今や日本社会でも、「うつ病」「適応障害」などの心の病による休職は珍しいことではなくなりました。

一度、休職してしまうと、復職するまでに一定の時間を有します。また、休職は職場だけでなく家庭にも大きな影響を及ぼすため、休職しない・休職させないためのセルフケアという共通認識が職場内で不可欠になります。

私が、セルフケアが特に必要であると感じているのは「人事異動後」のタイミングです。

業務内容や勤務地、立場や人間関係など環境が大きく変化する時期であるため、環境の変化によるストレスが生じていないか、ご本人も管理職の方も意識的に気をつけていただきたいです。

また、管理職へ昇進・昇職などは一見すると喜ばしいことですが、その分、責任感が伴い、管理業務などこれまでと異なる業務内容が加わることは大きなストレスとなります。

管理職に昇進・昇職したことによってメンタルヘルス(心身)の不調をきたし休職する方も少なくないことをみなさんには知っておいていただきたいです。

【休職しない・休職させないためのセルフケア】を合言葉にみなさんも心の健康の維持に努めていただけますと幸いです。

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