教育

「学校」という場の特殊性

子どもの頃の記憶


皆さんは自分が子どもだった頃に周りの世界がどのように見えていたか思い出せるでしょうか?

今回は、学校という場所がどういう風に見えていたか、また、どのような場所に感じていたか思い出しながら読んでいただけたらなと思います。

私は仕事の関係で、実際に小・中学校の教室に入り、子どもたちへ向けて授業を行うことがあるのですが、初めて仕事で小学校の教室に足を踏み入れた時には、卒業してから15年の歳月が経っていました。

その時に一番に感じたのは、

「教室ってこんなに小さかったんだ‥」

ということでした。

児童(生徒)数の多い学校では、1クラス30名ほどの子どもたちが、教室で生活をしています。

教壇から子どもたちを眺めて、「こんな窮屈でストレス感じていないのかな‥」と思ってしまうほどです。

小・中学生の保護者の方のは授業参観などで教室に入る機会があるかと思いますが、大人になってから見た教室はどう見えたでしょうか?

大人の感覚からすると小さな教室かもしれませんが、子どもたちの目からは教室が大きく見え、自分の生きる世界の大部分を占める存在のように見えていたんだと思います。

大人と子どもの感覚の違いについて話しましたが、もう少し、子どもたちの置かれている「学校」あるいは「教室」について考えてみたいと思います。

子どもは年間200日を学校で過ごす


子どもたちは、年間約200日の日中の大半を学校で過ごしています。

あまり驚きはないかもしれませんが、私は、数字にしてみて改めて、子どもたちが1年の大部分を学校で過ごしていることを実感しました。

その生活の基本的な単位となるクラスは、子どもと先生の二者の関係で成り立っており、放課後・休み時間を除けば、そのメンバーは1年間は固定化されます。

そうやってそのメンバーで1年間を過ごしたかと思うと、翌年にはクラス替えがあります。仲の良い友達と離れることもあるかもしれませんし、また新しいメンバーで1年間の人間関係を築いていかなければなりません。

しかも、小学校の場合、去年は全く知らなかった先生が担任となることも珍しくないでしょう。クラス替によって一年の過ごし方が決まるといっても過言ではないように思います。

もちろん、単級でクラスが変わらないという子どもたちもいます。私も小学校時代を6年間単級で過ごし、中学生になって初めてクラス替えを経験しました。

ということは、小学校であれば、6年間もメンバーが固定されるということになりますね。

学校は集団で過ごすことになるためか、ややもすれば「みんな仲良く」「ケンカはいけない」といった雰囲気があるように思います。

30人もの人数がいれば、大小に限らず何かトラブルが起きることは明らかですね。

ですので、トラブルの未然防止というよりは、トラブルが起きた際の早期発見適切な対応が重要になります。

子どもたちは、何かが起きた後も、固定されたメンバーの中で一定期間を過ごさなければならないため、私たち大人は、子どもたちのその後の生活に目を向けなければなりません

大人の世界に置き換えてみると‥

皆さんも大人になって日々を過ごす中で、ご家庭やお仕事、地域などで様々な人と関わっておられると思いますが、”年間200日の日中の大半”という規模で関わっている人はどのくらいいるでしょうか?

また、その人たちは、皆さんが小・中学校で過ごしていた頃のクラスメイトの数と比べてどうでしょうか?

職場が学校のクラスのようであったらと考えてみてください。

1年単位でメンバーがコロコロ変わり、上司も全く知らない人が次々にやって来る、しかもその中で仕事をこなすだけでなく、休み時間も仲良く話したり遊んだり、定期的な行事(運動会等)では全員で協力することが求められる。

中にはこういった職場に居られる方やそういったことが苦にならない方もいらっしゃると思いますが、仕事となれば、意見が割れたり、衝突したり、気の合わない同僚や上司もいることでしょう。

しかし、職場では気の合わない同僚や上司と常に仲良く過ごすことまで強いられることはないのではないでしょうか。

このように、子どもが学校で置かれた状況を大人に引き直してみると、学校や教室という空間が特殊な空間であることがわかります。

もちろん、子どもたちはそのような空間で過ごすことがいわゆる一つの「仕事」なのかもしれませんし、そのような空間での生活を通して学ぶこともたくさんあると思います。

子どもの主体性を尊重する

私は、”子どもの内的世界” を理解しようと努める際に、子どもが属する環境を考慮することを忘れないように心がけています。

子どもたちに起きている問題が「学校」でのことなのか‥はたまた「教室」なのか‥「部活」なのか‥あるいは「家庭」であるかもしれません。

私たち大人は、子どもたちが学校で生活することを ”当たり前”  に思いがちですが、その環境を改めて考え直してみると不思議に思うこともあるように思います。

今回は、子どもの生活する「学校」という環境について考察しましたが、子どもとの関わる上で、子どもの置かれた環境に立って考えることが非常に大切になってきます。

我々大人は、良かれと思って、大人目線で子どもの問題の解決を図ろうとしてしまったり大人の常識を子どもにも押し付けてしまったりすることがあります。

その結果、一見すると問題が解決したようにみえるのですが、子どもの中では解決しておらずモヤモヤを引きずってしまうことが少なくありません。

ですので、子どもの問題の解決に立ち会う際には、まずは、子どもの目線になってみて、彼らの置かれた状況を理解することに努めていただき、そして、その子自身が「どうしたいのか」を聴き、その思いに寄り添いながら対応にあたっていただけたらなと思います。

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