食育心理学

心の不調は食事で改善できる!【脳内神経伝達物質と栄養素】

脳内神経伝達物質とは?

神経伝達物質とは、脳内において神経細胞と神経細胞の間の情報伝達を担う化学物質のことです。

脳内神経伝達物質と聞くと「どんなもの?」と思う方が多いかと思いますが、皆さんもセロトニンドーパミンノルアドレナリンなどの名称は耳にしたことがあるのではないでしょうか?

脳内神経伝達物質は、睡眠、行動、気分、記憶、エネルギーなど脳機能において重要な役割を果たします。

たとえば、「記憶力や集中力が落ちてきな‥」と感じるなら、記憶力学習能力に関わっているノルアドレナリングルタミン酸が不足しているのかもしれません。

「イライラするうつっぽい症状がある」という人は、セロトニンが不足している可能性があります。

脳内神経伝達物質の生成過程

脳内神経伝達物質は、食べ物から直接脳内で生成されており、タンパク質の構成成分である、グルタミンやチロシン、フェニルアラニン、トリプトファンなどの必須アミノ酸は、脳内で神経活動の伝達に不可欠な神経伝達物質を作ります。

これまで、食物からタンパク質を摂取する必要があるということを何度もお伝えしてきましたが、必須アミノ酸脳内神経伝達物質の合成に欠かせないことがその理由にあるとわかっていただけたかと思います。

食べ物に含まれるタンパク質は、胃や腸で細かく分解されながら、アミノ酸に分解されます。そして、分解されたアミノ酸は、小腸で吸収されて、全身の細胞に運ばれていきます。

そして、脳内へ運ばれたアミノ酸が神経伝達物質へと合成される過程を下記の図にまとめましたので、これを参考にしながら、脳内神経伝達物質の効用についてさらに詳しく紹介していきたいと思います。

【脳内神経伝達物質は栄養素からつくられる】高画質ver

脳内神経伝達物質の効用

グルタミン酸

グルタミン酸は、体内で合成することができる非必須アミノ酸の一種で、食事における「旨味」の成分として有名ですが、脳内においても主要な神経伝達物質の1つです。

グルタミン酸は「興奮系」の神経伝達物質とされており、グルタミン酸によって脳が活性化されるため、記憶力や集中力の向上に効果があるといわれています。

それとは反対に「抑制系」の神経伝達物質として「GABA(γ-アミノ酢酸)」がありますが、グルタミン酸は、このGABA(γ-アミノ酪酸)の材料にもなっています。

グルタミン酸は、「脳の活性化」の他にも、「胃の調子を整える」「血圧を下げる」「脂肪の蓄積の抑制」「アンモニアの解毒・利尿作用」などの効用もあり、私たちの生活には欠かせないものです。

ノルアドレナリン

ノルアドレナリンは、脳を覚醒させて高いパフォーマンスを発揮するために必要な神経伝達物質です。

私たちが危機的な状況(ストレス反応)に遭遇したときに咄嗟に心身を興奮させるシステム、つまり「闘争と逃走(Fight or fight)」のシステムをつかさどる物質とされています。

また、ノルアドレナリンの適度な分泌は、記憶力集中力ワーキングメモリー(情報処理スピード)などを向上させることがわかっていますが、逆にその分泌量が不足すると覚醒度が低下し、集中力・やる気の低下、無気力・無関心、睡眠障害といったうつ病に代表される症状が現れます。

セロトニン

セロトニンは、私たちの感情の安定に大きな影響を与える神経伝達物質で、リラックス安心感幸福感などをもたらすことから、別名「幸せホルモン」とも呼ばれています。

このセロトニンが不足すると、慢性的ストレスイライラ感向上心の低下意欲低下うつ症状不眠といった症状が出現します。

うつ病は、脳のセロトニンが欠乏することが一因と考えられており、実際にセロトニンを増やす作用をもつ抗うつ剤が効果を示しています。

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GABA(ギャバ)

GABAは、抑制系の脳内神経伝達物質で、脳が興奮した際に、ブレーキをかける役目があります。正式には、γ-アミノ酪酸というアミノ酸の一種で、これが不足するとイライラしたり、落ち着かなくなったりするだけでなく、不安感恐怖感が出ることもあります。

GABAは、ヒトの体内では、主に抑制系の神経伝達物質として脳内の血流を活発にし、酸素供給量を増やしたり、脳細胞の代謝機能を高める働きをします。

抑制系とは、端的にいえば「精神を安定させる」役割を指します。興奮した神経を落ち着かせたり、ストレスを和らげリラックスさせるなど、現代人がストレス社会を生きていくために必須の役割を果たしているといえるでしょう。

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メラトニン

メラトニンは、脳の松果体という部位から分泌されるホルモンで、覚醒と睡眠を切り替えて、自然な眠りを誘う作用があり、別名「睡眠ホルモン」とも呼ばれています。

メラトニンは、直接的な睡眠作用を持つほかに、概日リズム(体内時計)に深く関係し、深部体温を下げる作用があり、睡眠・覚醒リズムの調節に重要な役割を果たします。

眠りを誘うほかにも、抗酸化作用によって細胞の新陳代謝を促す作用や、疲労回復につながる作用があることが明らかになっており、病気の予防老化防止(アンチエイジング)などの研究が進んでいます。

睡眠の質を高めるホルモン【メラトニン】と栄養素の関係睡眠ホルモンと呼ばれるメラトニン ぐっすり眠り、朝スッキリ目覚めることは、日中の活動パフォーマンスを大きく向上させます。そして...

まとめ

この記事では、脳内神経伝達物質の効用や生成過程について紹介しましたが、最後に簡単なおさらいをしておきたいと思います。

まずは、私たちの脳と心の健康のためには、日々の生活で脳内神経伝達物質が十分に生成されていることが重要であるとわかりましたね。

そして、脳内神経伝達物質は食べ物(栄養素)を材料に直接脳内で生成されますので、食事の内容が脳と心の健康に直接影響しているということについてわかっていただけたかと思います。

「あれ‥なんかいつもの調子と違うな‥?」と身体面や精神面での不調を感じたときは、普段の食事で自分が何を口にしているか見直してみてください。食べているものを意識するようになると、食事に関する正しい知識が必要であるという実感を得ることができます。

食(栄養素)への意識と知識を高めて、自分のライフスタイルにあった食習慣を確立させましょう!

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