食育心理学

中途覚醒を改善したい方必見!【睡眠の質を高める食習慣】

睡眠は日中のパフォーマンスに直結してきますが、日本は、世界でも睡眠時間が短い国としてよく知られており、2019年にOECD(経済開発協力機構)などが発表した調査では、日本人の睡眠時間は先進国の中でワースト1位の短さとなっています。

また、厚生労働省研究班の調査でも、日本の成人の35%が何らかの不眠症状に悩んでいることがわかっており、不眠症は日本人にとって国民病と言えるでしょう。

不眠症状には、以下の4つのタイプがあります。

  • 入眠困難:寝つきが悪い、入眠するまでに30分〜1時間以上かかる
  • 中途覚醒:眠りが浅く、途中で何度も目が覚める
  • 早朝覚醒:起床予定時刻より早くに目が覚めてしまう
  • 熟眠障害:睡眠時間は十分でもぐっすり眠れたという満足感(休養感)が得られない

「眠れない」ということは、身体的なダメージが蓄積されるだけでなく、精神的なストレスをも増幅させ、私たちのメンタルヘルスに多大な悪影響を及ぼします。

この記事では、不眠症状の中でも「せっかく眠りについても、途中で何度も目が覚めてしまう」という【中途覚醒】の悩みに対し、食事(栄養素)の面からの改善を目指す方法について紹介したいと思います。

睡眠のリズム

眠りにはリズムがあります。浅い眠りのレム睡眠と深い眠りのノンレム睡眠があることを知っている人は多いかもしれません。

  • レム睡眠
    浅い眠り、夢を見るときの睡眠、高速眼球運動
  • ノンレム睡眠
    深い眠り、成長ホルモン(GH)が分泌されるときの睡眠、徐波睡眠

私たちは、眠りにつくとまず、深い睡眠であるノンレム睡眠に入ります。その後、レム睡眠が起こり(約90分の間隔で出現)、再びノンレム睡眠が起こる‥。

この繰り返しのリズムの中で、私たちの眠りは徐々に浅くなっていき、朝目覚めることになります。

ところが、寝しなに深くなるはずの睡眠(ノンレム睡眠)が浅くなってしまう中途覚醒が起き、睡眠のリズムが崩れてしまいます。

よく、夢を見て一度起きた後に、またその夢の続きを見るという人がいますが、そういう人はしっかりとした睡眠がとれていないので、朝起きても身体がぐったりしているのではないでしょうか。

そこで、この中途覚醒を防ぎ、睡眠の質を高めるには、最初のノンレム睡眠をいかに深くするか】が鍵です。

深い睡眠に必要なメカニズム

深い睡眠をとる秘訣は、体内の深部体温を下げるという人体のメカニズムに隠されています。

私たちの身体は、日中は体温を高く保っており、眠りにつくときに、身体の表面にある皮膚から熱を逃がすことで、身体の中心の深部温度を下げています。

みなさんも昼寝から起きた際に、汗だくになっていたという経験がありませんか?

私たちの身体は、このように皮膚から熱を逃がして深部体温を下げることで、脳と身体をしっかり休ませているんですね。

よく赤ちゃんの手足が温かいと「眠くなってきたサイン」と言われてますが、これも手足から熱を放散することで深部体温が下がっている証です。

深い睡眠に必要な栄養素【グリシン】

深部体温を下げるためには「グリシン」という栄養素が必要になります。

グリシンはアミノ酸の一種で、睡眠の「深さ」をつくるとき必要な栄養素として知られており、ベッドに入る2~3時間前にグリシンを摂取すると、体温が調節され、深い睡眠に入る準備を整えることができます。

グリシンを豊富に含む食材

グリシンは、ゼラチンから発見されたアミノ酸なので、牛すじ豚足などコラーゲンが豊富な食品に含まれており、その他にタライカタコホタテカジキマグロなどの魚介類に多く含まれます。

グリシンは、就寝する2~3時間前に摂ると良いとされていますので、夕食に魚介類を取り入れるとよいでしょう。

イカタコマグロなどはお刺身でそのまま食べることができるため、多忙な方にもオススメです。ただし、イカやタコなどは消化に時間がかかるため、就寝ギリギリでの摂取は控えましょう。

また、外食の場合には、牛すじの煮込み軟骨唐揚げ海鮮や骨つき肉の入った鍋・スープなどのメニューを選んでみてください。

サプリメントの活用

最近では、グリシンのサプリメントも手軽に手に入るので、仕事が忙しく夕食を工夫するのが難しい方などはサプリメントから摂取するのも1つの方法です。

忙しくて睡眠時間が伸ばせない方こそ、睡眠に関わる栄養をしっかり摂って、睡眠の質を高める工夫をしてみてはどうでしょうか。

「中途覚醒」を誘発するその他の要因

この記事では、中途覚醒を防ぎ、睡眠の質を高めるために「グリシン」という栄養素を含む食材を食べることを紹介しましたが、食事内容以外にも以下のような生活習慣が中途覚醒の要因となるため、注意してください。

  • 就寝前の飲酒習慣
  • 糖質を摂らずに寝る

就寝前の飲酒習慣

厚生労働省の調査では、男性の約5割・女性の約2割が、1週間に1回以上寝るために飲酒していることがわかっています。

お酒は、脳を麻痺させる「麻酔」のような効果があるため、眠るまでの時間が短くなって寝付きが良くなったように感じます。

そのため、【手軽に使用できる睡眠薬】として誤解する人が多いようですが、これは間違った知識です。

お酒が睡眠中に分解されていくと「麻酔」の効果は薄れるため、睡眠の途中で目が覚めることが多くなります。

また、お酒には【強い利尿作用】があるため、トイレが近くなることも睡眠を妨げる要因の1つです。

さらに、睡眠のために飲酒を続けているとお同じ量では、効果が弱くなるため、徐々に飲む量が増えてしまったり、お酒を急にやめるとその反動で眠れなくなったりすることがあります。

飲酒自体が悪いわけではありませんが、飲酒は睡眠を妨げる要因となるため、中途覚醒の症状に悩む方で寝る前に飲酒する習慣がある方は、飲酒頻度を減らす、寝る前の飲酒量を減らす、飲酒時間を早める、就寝直前まで飲み続けないなど自分に適した方法で少しずつ改善を図りましょう。

糖質を摂らずに寝る

不眠に悩む方に日々の食習慣について尋ねると「ダイエットのために夕食では『糖質』を取らないようにしています。」という回答が返ってくることが多いです。

私たちは、食べ物から摂取した「糖」を体内で消化吸収することによって活動に必要なエネルギーを作っています。

その過程の中で「血糖値」と呼ばれる指標が上下することになるのですが、この血糖値の上下の幅が大きくなると、身体的・精神的に様々な悪影響を及ぼします。

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私たちは就寝している間にもエネルギーを消費しており、就寝前に十分な炭水化物(糖質)を摂取できていない場合、就寝中に血糖値が低下してしまう「低血糖」状態に陥ります。

そして、「低血糖」状態を回避するためにストレスホルモンであるコルチゾールが放出されることになり、このコルチゾールが就寝中の中途覚醒を誘発する要因となります。

そのため、中途覚醒に悩む方は、夕食時に糖質を完全にカットすることは避けてください。

ただし、夜間は身体が栄養素を吸収し溜め込みやすい時間帯でもあるため、夕食の時間を就寝予定時刻から逆算して2~3時間前に設定し、タンパク質・糖質・脂質をバランスよく気持ち軽めに摂ることを心がけましょう。

医療機関の受診

不眠症状が続くと、「眠れない‥」「早く寝なければ‥」と焦る気持ちが生じます。この焦る気持ちは、不眠症状を悪化させるだけでなく、心(うつ)や身体(ストレス性疾患)にまで悪影響が及ぼすため注意が必要です。

どうしても不眠症状が治らない時には専門医に相談しましょう。不眠症は、精神科や心療内科で扱いますが、「精神科へ行くのはちょっとなぁ‥」という方は、まずはかかりつけ医に相談してみたり、心療内科を受診してみてください。

病院を受診して不眠について相談するだけでも不眠症状は和らぎます。大切なのは、眠れない悩みを1人で抱え込まないということです。

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