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開業届を提出するまでの手順【フリーランス臨床心理士への道】

個人開業して開業届を出す主な目的は、確定申告の際に青色申告制度】を利用するためといえるでしょう。

「え、青色申告制度って何ですか?」となった方には是非とも最後まで読んでいただきたい内容になっておりますのでよろしくお願いします。

青色申告制度とは、簡単にいうと最大65万円の控除を受けることができる制度で、臨床心理士であれば、学会費書籍代などの業務に関する支出を経費として計上することができるようになります。

詳しくは後述しますが、個人事業主の所得は【事業所得収入−必要経費】という計算式で割り出されます。

つまり、収入(稼いだ金額)から経費(青色申告で最大65万)を引くと事業所得がその分下がるため、支払う税金(所得税・住民税・国民保険など)が減額されるということです。

つまり‥あまり声を大にしては言えませんが「節税できる」ということです(脱税は絶対にやってはダメです)。

大学院まで修了したけれど決して高くないお給料‥。しかし、1回5000円以上するスーパヴァイズを定期的に受けつつ、研修会や学会にも参加し、さらに書籍を買って自主学習‥と月の支出は馬鹿になりませんよね‥。

この記事では、そんな臨床心理士さんが開業した際の手続き方法(開業届青色申告承認申請書の提出など)、そして、青色申告制度を利用するメリットについて簡単に紹介したいと思います。

開業届の提出と管轄区域について

開業届を提出するタイミング

臨床心理士として新たに事業を開始した際には、原則として開業から1ヶ月以内「個人事業の開業・廃業等届出書(開業届)」を納税地となる税務署へ提出する義務が生じます。

しかし、新たに事業を始めたにも関わらず開業届を出さなければ法的に罰せられるといったことはありませんので安心してください。

ただし、個人開業して開業届を提出すると、税金計算上で有利な取り扱いができる青色申告制度が利用できるというメリットがあるため、なるべく早めに開業届を提出することをオススメします。

開業届の取得方法

まず、開業届を提出する方法ですが、個人事業を始めて1ヶ月以内事業所の納税地となる事務所個人事業の開業・廃業等届出書(開業届)を提出するだけです。

この個人事業の開業・廃業等届出書(開業届)の取得する方法は、①税務署に取りに行く ②ネットで書式をダウンロードする という2つの方法があります。

①の場合は、近くの税務署に行き、窓口で「事業を始めたので開業届を提出したい」旨を伝えると職員さんが書類のある場所を教えてくれます。

後述する「青色申告承認申請書」も同時に取得できるため、その場で必要項目を記入して、一緒に窓口へ提出することができます。

②の場合は、「居住地(例:京都市○○区)+ 開業届」などとWeb上で検索すると手に入りますし、国税庁のウェブページからもダウンロードできます。

個人事業の開業・廃業等届出書(開業届)(原本)

個人事業の開業手続きは、なんとこのA4一枚の書類(提出用・控え)を提出するだけです。

あらかじめ「屋号」などが決まっていれば、ものの半日もあれば開業手続きが終わってしまいます。

開業届の記入方法

開業届には、「納税地」「氏名」「屋号」「事業の概要」などの記入欄があります。

「屋号」については聞き慣れない方がいらっしゃるかもしれませんが、その他に特別な事項などはありません。開業届の記入に関する詳細については下の記事で紹介しています。

ちなみに「屋号」とは、フリーランスや個人事業主がビジネスを営む際に用いる「事業の名称」「店舗の名前」として使用するものです。屋号は、請求書や領収書などの発行銀行の口座開設に使用することができます。

開業届の「屋号」の欄は、空欄のままで提出することもできるため、迷った場合には、「個人名」、あるいは「空欄」のまま提出しても大丈夫です。

臨床心理士で開業されている方の屋号には、「〇〇オフィス△△」「〇〇サロン△△」「〇〇ラボ(研究所)△△」などがよく使われているようです。

「屋号」を決める際の注意点

用紙には「屋号」を記載する欄がありますが、この「屋号」の取得の際にいくつか注意点があります。

個人事業の屋号で「〇〇会社」や「〇〇法人」といった法人企業であると誤認させる名称を使うことは法律で禁止されており(会社法第7条)、商標登録されている他者の「屋号」なども使用することができません(商法12条1項、会社法8条1項)。

また、臨床心理士が「屋号」を取得する際には、上記に加え「△△クリニック」「△△診療所」のような屋号をつけることも法律上禁止されていることにも気をつけてください(医療法3条、医師法18条)。

既存の屋号や会社名と被っていないか心配になった方は、一度、Web上で自分が使いたい屋号がヒットしないか検索してみましょう。

開業届の提出方法

提出先となる税務署

次に、開業届の提出方法です。店舗や事務所を構えている方であっても、納税地の項目には自宅の住所を記入するの原則となっているため、基本的にはお住いの地域を管轄している税務署へ開業届を提出します。

管轄の税務署が判断しづらい場合は、「税務署の所在地などを知りたい方-国税庁」のページから管轄の税務署を確認しましょう。

税務署の窓口で提出する

税務署での提出は、その場で用紙に記入して書類を作成しても構いませんし、事前に用紙をネットからダウンロードして作成した書類を持参してもOKです。

後は、書類を窓口に提出して職員さんに確認してもらい、税務署の受付印を押した控えをもらったら受付完了です。

その場で記入して提出される方は、開業届の書き方で紹介した用紙の項目にある「職業」「屋号」「事業の概要」などを予めメモしたものを持っていくと手続きがスムーズになるでしょう。

郵送及びネットで申請する

税務署の窓口で提出する以外には、郵送や税務署の時間外収受箱への投函での提出が可能です。

郵送や時間外収受箱への投函での提出の場合、本人確認書類のコピー返信用封筒など、税務署に直接提出するよりも用意するものが増えてしまうことがやや手間になります。

また、開業に必要な書類を無料で一括作成・申請できるWebサービスなどもあります。

青色申告制度とは

個人事業の確定申告には「白色申告」「青色申告」の2種類があり、特に申告をしなければ自動的に白色申告となります。

青色申告ができる人は、不動産所得山林所得事業所得のいずれかの所得がある人で、且つ、納税地の所轄税務署長の承認を受けた人が利用できる制度です。

不動産所得とは
土地や建物などの不動産の貸付、船舶や航空機の貸付による所得

山林所得とは
山林をその取得日以降後5年を経過した後に伐採して譲渡、またはそのまま譲渡したことによって得た所得

事業所得とは
農業や漁業、製造業やサービス業、その他の事業などを通じて得た所得のうち、譲渡所得と山林所得を除いたもの

上記の所得があり、且つ、複式簿記を使って一定水準の記帳記録を行い、その記帳記録に基づいて正しい申告をする人に対して、所得金額の計算などについて有利な取り扱いが受けられる制度を「青色申告」といいます。

フリーランスや個人事業主だけでなく、サラリーマンやパートなどの給与所得者であっても、上記の所得があれば青色申告の対象者となります。

青色申告の各種特典

青色申告制度は、次の5つの面での特典があります。

  • 青色申告特別控除
  • 青色事業専従者給与
  • 貸倒引当金などの優遇税制の適用
  • 純損失の繰越し控除
  • 純損失の繰戻し還付

臨床心理士が個人事業主(フリーランス)として青色申告する場合には、このうちの「青色申告特別控除」が大きく関係してきますので紹介したいと思います。

青色申告特別控除

青色申告特別控除とは、不動産所得または事業所得のある事業を営んでいる青色申告者で、複式簿記に則って記帳し、賃借対照表損益計算書を併せて期限内に提出した場合に、最大65万円を総所得金額から控除することができる制度です。

個人事業主(開業・フリーランス)の所得は、【事業所得収入−必要経費】という計算式で割り出されるため、収入(稼いだ金額)から必要経費(青色申告で最大65万)を引いた額が事業所得になります。

たとえば、サラリーマンやパートなどの給与所得者であれば、1月から12月までの1年間に200万の給与が発生した場合、この200万に税金がかかります(控除の話は省略)。

しかし、これが個人事業主であれば、経費などもかかっているため、1年間に200万の収入があった場合でも、事業の運営に50万の経費がかかったのであれば、50万を必要経費として差し引いた150万(事業所得)に税金がかかるというわけです。

つまり、青色申告特別控除を活用すると【最大65万円の控除を受けることで総所得金額が下がり、税金(所得税、住民税、国民保険など)の負担が減る】ということです。

※複式簿記を利用していなくても、青色申告者の場合は、不動産所得、事業所得、山林所得から最大10万円を控除することができます。

※2020年度分以降の青色申告特別控除額は55万円となりますが、e-Taxによる電子申告あるいは電子帳簿保存のいずれかを行うことで、控除額65万円を受けることができます。

申告の際に必要となる複式簿記や賃借対照表、損益計算書などの書類の作成については、下の記事を参照してください。

申告に関する記事

臨床心理士が個人事業主として開業した場合に青色申告の控除となる【必要経費】の内訳は以下のようなものが該当します。

  • 学会費・研修費、書籍代など
  • 消耗品・備品費(筆記具、領収書、ファイルなど)
  • 旅費交通費
  • 電話予約のための通信費
  • 打ち合わせ代(交際費、会議費など)
  • 事業に必要なもの(検査用紙等、電子機器・家具など ※減価償却)
  • スーパーヴァイズ(SV)費用
  • 事務所費用(家賃※、光熱費、レンタルスペースの使用料など)
  • 外注費用(HP制作費用、デザイン制作費用、サーバー・ドメイン管理費用、確定申告等の会計ソフト費用、税理士等の委託費用など)
  • 決済手数料(カード決済導入時)

‥etc

臨床心理士の資格を活かして仕事をする方の中には、研修会やSV、文献購入などで年間10万円以上の支出があるという人も少なくないのではないでしょうか。

サラリーマンやパートなどの給与所得者であっても青色申告制度を利用できると前述しましが、つまりそれは、臨床心理士として給与をもらいながら、個人事業主(開業・フリーランス)として稼いだお金を「事業所得」として青色申告書を使って確定申告をすることが可能になるということです。

ですので、「フリーランス活動はまだ先のことだし‥」と考えておられる方も、節税の面から青色申告制度の活用を検討してみてはいかがでしょうか。

※ただし、常勤の職がある方は、雇用されている機関の副業に関する規定について確認するようにしてください。

フリーランスとして完全に独立して収入を得ている人は一握りです。まずは、給与所得者として一定の給与を得つつ、一方で個人事業主として活動しながら、マネーリテラシーや経営ノウハウ、社会の仕組みについて学ぶことで事業所得を増やしていきましょう。

青色申告承認申請書の提出について

青色申請承認申請書の提出期限

提出期限については、すでに事業を行っている方で、新たに青色申告の申請をする人は、その承認を受けようとする年の3月15日までに、納税地の所轄税務署長に「青色申告承認申請書」を提出しなければなりません。

ただし、その年の1月16日以後に新規に業務を開始した場合には、その開始日から2ヶ月以内であれば提出することができます。

青色申告承認申請書は、国税庁のホームページからダウンロードできます。

青色申告承認申請書(原本)

青色申告承認申請書の記入の仕方については、下の記事にまとめています。

青色申請承認申請書の提出方法

申請書類の提出方法については、主に以下の4つがあります。

  • 納税地となる所管税務署の窓口で提出する(開庁日)
  • 納税地となる所管税務署の時間外収受箱へ投函する(閉庁日)
  • 納税地となる所管税務署へ送付する
  • 国税庁のオンラインサービス「e-Tax」からの申請

開業に必要な書類を無料で一括作成・申請できるWebサービスなどを利用すれば、Web上で「開業届」と併せて提出することもできます。

まとめ

当記事は、開業届や青色申告制度に関する全てを網羅できているわけではありませんが、フリーランスとして開業を考えておられる方にとって最初の一歩を踏み出すための一助となれば幸いです。

最後に開業届と青色申告承認申請書の提出について簡単にまとめておきます。

  • 開業後、期限内(1ヶ月以内)に事業所の納税地の税務署へ「個人事業の開業・廃業等届出書(開業届)」を提出する
  • 新規開業の場合は、開業開始日から2ヶ月以内に「青色申告承認申請書」を事業所の納税地の税務署へ提出する
  • 「開業届」と「青色申告承認申請書」は同時に提出できる
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