コミュニケーションを紐解く

コミュニケーションは感情と情報に分けられる
人と人とのコミュニケーションを大きく2分すると、
「感情」のやりとりと「情報」のやりとりに分類できます。
他者と話すことに臆病になっている人の中には、このように会話の内容(情報)や相手の反応を気にするあまり、他者と話す機会を避けてしまう人が少なくないように思います。
誰かと話そうとするときには、もちろん話す内容も必要になりますが、それ以上に「この人とこの話をしたい」という気持ちが大切になります。この気持ちがなければ言葉は自然に出てきません。
人と人との会話は、「伝えたい」「知ってほしい」「もっと知りたい」といった親密になりたい気持ちを抜きにして話をしようとすると、心のこもらない、単なる情報交換のための話に終始します。
他者との会話に臆病にならないためには、まず、「とりあえず何か話さなくてはならない‥」というとらわれから解放される必要があります。
そのためには、まずは、自分の素直な気持ちを確かめる作業から始めましょう。
「自分は話し下手だ‥」と思っていても、自分の気持ちを把握できるようになれば、徐々に自分の思っていることをありのままに話せるようになります。
自分の気持ちをつかむためにはどうしたらいいのか
私は、自分の気持ちを把握するために以下の作業を大切にしています。
- 自分の心の中を見つめる時間をつくること
- どんな気持ちもありのまま受け取り、逃げないように努力すること
まずは、湧いてきた自分の気持ちを一番ピッタリくる言葉に換えてみましょう。
小説家のように山ほどの言葉を持っていない私たちには、なかなか大変なことかもしれませんが、上手い下手はないので自分なりの表現で大丈夫です。
子どもは、突拍子もない言葉を組み合わせて表現するのが得意ですよね。
- 心の中で土砂降りの雨が降っている(悲しい)
- 沸騰したやかんのように怒っている(怒り)
- 心臓が太鼓のように鳴っている(緊張)
といったように子どもの頃の純粋な気持ちに戻って自分の今の気持ちを探すと意外にピッタリくるものがあったりします。
気持ちを言葉に換える際に大切なことは「焦らない」ことです。まず、自分の気持ちに耳を傾けて聴きましょう。そうするといろんな気持ちがあることがわかります。
例えば「腹が立った」という怒りの気持ちが真っ先に思い浮かんでも、それと同時に「悲しい」「がっかり」といった気持ちも感じているときがあります。
そして、イヤな気持ちが出てきたとしても、決してそれを取り去ろうとしないようにしましょう。怒っているのも、緊張しているのも「あなた」であり、そこに「あなたらしさ」があります。そういった価値観や性格を含めて、ありのままの自分を受け止めてあげてください。
「情報」に「感情」を付け足す
人と人とのコミュニケーションは、「感情」のやりとりと「情報」のやりとりに大きく分類できることをお伝えしました。そして、まずは「自分の素直な気持ちを把握することが大切である」ということをお伝えしました。
次は、自分の気持ち(感情)を相手に伝えることについて解説していきたいと思います。
私たちは会話の中で、出来事(情報)の中で人がどう感じたか(感情)がわかると、相手の体験した情景がよりイメージしやすくなります。話し上手と言われる人を観察すると、伝えたい情報の中に、自分の感情を上手に織り交ぜて話しています。
下記の言い方をみてみましょう。
「昨日の」
①は情報のみを伝えており、②は気持ち(感情)を情報と一緒に伝えています。同じ情報を伝えたい場合でも、②のように気持ち(感情)を一緒に伝えた場合の方が、状況がより鮮明に目に浮かびますね。
ありのままの気持ちを素直に伝えてみる
人は皆、一人ひとりが違っていて当たり前です。「違い」は優劣でも正誤でもなく、ありのままのあなたの証明です。無理に他人に合わせたり、本当の自分を隠したりする必要はありません。
虹は七色あるから、あんなにも美しく見えるのです。もし虹が、ただの一色であったらつまらないものになるでしょう。
人と人との関係も同じです。あんな人もこんな人もいて、それぞれが違ったことを考えているから、自分の持っていない新しい世界との出会いや発見があり、驚き楽しむことができます。
他者との違いをよくわかることが、恐れをなくしていくことに繋がります。
違っているから、あなたである。
違っているから、ステキである。
時に孤独を感じても、その孤独やつらさをわかってくれる人に、きっとどこかで出会います。たとえ傷つくことがあっても、人にはその傷を癒す力もあります。
傷が回復したとき、人は新たな力‥自分が自分らしくあろうとする力を獲得していることでしょう。
ですので、あなたがあなたらしく幸せに生きるために「言いたいこと」や「わかってもらいたいこと」はありのままに伝えてみましょう。
一言で通じなければ、さらに言葉を補って「わかってもらいたい」という気持ちを込めて伝え続ければいいのです。
最後に、これまで紹介した一連の作業や考え方(マインド)は、心理支援に携わる臨床家にとっても非常に大切なことであると私は思っています。
日々の生活の中で、自分について立ち返る機会をつくることは、今後の他者との関わりに必ずプラスの影響を与えます。
皆さんも
気持ちを言葉にする
を合言葉に生活してみませんか?